とある日の日曜日、お寺さんから「大至急来てくれないか」とのお話がありました。
到着すると、和尚さんと今回のお施主様となるお墓の持ち主の方が何やら神妙そうにお話をしています。
早速内容を伺うと、このお施主様のお墓の裏側の方から、「背面の外柵が倒れて来そうだから早めに修理してくれないか」との事でした。
私とお施主様、和尚さんの三人で実際に現場を確認すると、確かにお墓背面の壁が高く、傾いて今にも倒壊しそうです。
よく見てみると大切な基礎に所々割れが見られ、軽量ブロックで作られた土台も風化が進んでいるため、対応年数を超えてしまっている様子でした。
問題は背面の壁そのものよりむしろその下の基礎や土台である為、一度全面的に解体し、基礎より修繕工事を行う事になりました。
お施主様いわく、墓所内の土もかなり湿気が多くカロート内に水が溜まっていた事もあるそうですのでその点についても原因を探りながら工事を進め、改善をするようにします。
今回のポイント
- 背面の壁が倒壊しそう!
- 基礎割れがあり、全体的に歪んできている
- 水捌けが悪く、カロートにも溜まっている
- なるべく今の石を使って全て修復したい
- たくさんの石塔があるのでスッキリ見えるように配置したい
工事前の様子
正面から見た様子では損傷箇所がわかりません。
こちらが問題の背面壁です。
軽量ブロックに鉄平石を貼った仕上げになっています。一部は剥がれ落ち、劣化が進んでいます。
下から基礎、土台の軽量ブロック、御影石の外柵にかけて割れが見られます。
そのせいでお墓全体が歪んでしまっているように思います。
解体工事開始
さて、閉眼供養が済み解体工事の開始です。
基礎からやり直しのため、カロート以外は全て撤去になります。
まずは設置してある全てのお石塔類を撤去していきます。
ちなみに現場までの通路が65センチとかなり狭いため、クレーンを搬入するために橋を作って通路を高くし、やっとの事で石を運び出す事が出来ました。
これが問題の箇所ですね。完全に分離しています。ブロックにも鉄筋が見当たらないのが原因かもしれません。
背面の壁を撤去します。飛び散ったかけらで周囲のお石塔を傷つけないように養生をしながら行います。
次に内部の土を全て抜き取ります。
お施主様が心配されていた通り、土質はかなり水分を含んでおり、立っているだけで足が埋まって行くようです。水を抜いたばかりの田んぼの中にいるような感じでした。
もうこの土は使えないので処分し、代わりに水捌けの良い砂利と砕石で埋め戻しする事にしました。
その後、基礎の解体に入ります。
新しい基礎コンクリート
解体工事が終わり、新規に基礎コンクリートを打設する準備が出来ました。
今までは布基礎(外周の枠だけの基礎)でしたが今回は鉄筋を細かく編み込みベタ基礎(全面コンクリート)にしますので、強度も格段に上がります。
真ん中は完成後、コンクリートに水がたまらないように水抜き孔になります。
復元工事
基礎コンクリートも固まった所でいよいよ復元工事に入ります。
今までブロックだった土台はコンクリート製の2次製品に変わります。
下の写真は背面の壁だった所です。
このような感じで背面と左右土台はコンクリート製へと生まれ変わります。
コンクリートのジョイントにはかすがい金物を打ち込み、ズレを防ぎます。
全面は今までの御影石を再設置。
階段周りも高さを加工し直してだんだん完成へと近づいて来ました。
中には今までの湿った土の代わりに砂利と砕石を入れ、カロート内に湿気が溜まらないようにします。
お施主様のご要望で墓所センターに仕切りを入れる事になりました。
墓所内に土間コンクリートを打設し、更なる水対策と、同時に草むしりをしなくても済むように防草効果を狙います。
後は細かなお石塔や過去碑など、設置して完成になります。
ついに完成
工事途中で変更があり、今まで外柵の内側に設置されていた灯籠を階段の脇に下ろす事になりました。そのおかげで墓所内はかなり広く感じます。
背面の壁も今回は低く抑えたので全体的に広々感じ、明るくなりましたね。
倒壊寸前だった背面はこの通りスッキリ。
基礎の割れが心配だった所も強度を増して修繕する事が出来ました。
これでもう心配は要らないと思います。
この様に年月が経ったお墓でもなるべく材料を再利用して強度を上げる工事をする事が出来ます。
傾きやひび割れ等心配事がございましたらお近くの石屋さんにご相談されてみてはいかがでしょうか?
当店では群馬県内の工事につきましては施工可能ですのでお気軽にご相談ください。