お墓を建てたり既に所有している方にとって、意外と知られていない管理上の重大な注意点があります。
今回は知らずにやってしまうと墓石の劣化が一気に進んでしまう取り返しのつかない注意点をまとめてみました。
お墓参りやお掃除に行く際はぜひ確認してみてはいかがでしょうか?
御影石の性質
現在作られているお墓のほとんどが特別なご要望がない限り、“御影石”と言われるもので造られています。霊園を見回してもそれ以外の石材は見つけることが難しいほどです。
なぜ墓石に御影石が使用されるかというと、非常に硬質で劣化性、耐候性に優れているからです。
そのため古来より存在はしていたものの加工が難しく、一部の鳥居や石碑など一般的に使用される機会は多くありませんでした。
昭和中期頃になりますと切断や研磨加工する機械が登場し、広く一般的に墓石として扱われるようになりました。
尚、御影石という名前は石そのものの名称ではなく、白御影(花崗岩)や黒御影(閃緑岩や斑レイ岩)などといった広い意味で使われる総称であり、現在に至ってはロジスティックの大幅な発展により世界中から数えきれないほどの石種を扱うことができます。
やってはいけないこと[注意点6選]
“火”に注意
御影石は硬く、極めて劣化しにくいのが特徴ですが、600℃を超えると強度が一気に下がると言われています。それとは反対に砂岩などの柔らかい石は劣化が早く、火に強い特徴があります。
バーナーなどの火で炙ると弾けるように表面が飛び散っていきます。これを利用した板石貼りなどではバーナー仕上げといったものがあります。
ではお墓参りの注意点として、束でお線香に火をつけるとなかなか消えないですよね。炎が上がったままのお線香を香炉に入れてしまうと香炉内を炙ることになり、割れや破損してしまう場合があります。
上の写真の丸の中、ヒビが入っているのがお分かりいただけるでしょうか。
“塩”に注意
御影石は塩に弱く、塩分によって著しく劣化します。
墓石に塩を盛る、塩をまく等の行為を一度しただけでもそのまま放っておきますと、石の表面が剥がれ落ちてしまうほど石との相性は良くありません。
建築用語で主にコンクリートで同じ症状があるのですが、「ポップアウト」と呼ばれる現象です。
また、塩分の含まれる除草剤等の散布物に関しても同様にご注意ください。
万一塩を撒いてしまった場合はすぐに水で洗い流し、よく拭き取ってください。
写真ではわかりづらいのですが、お清めとして良かれと思い塩を撒いた結果、磨いたツルツルの表面はザラザラにはがれ落ちてしまっています。
“鉄”に注意
御影石の劣化のメカニズムは含まれる鉄分と関係していると言われています。鉄分が多く含まれている場合、まずそこから劣化が始まります。
御影石は若干の吸水性があり、例えばサビの出る金属製品を置くとそこからサビを吸い込んでしまいます。鉄製の線香皿やお供えにスチール缶の飲み物など、サビの出るものは石の上に置かないように注意しましょう。
アルミやステンレス製品は大丈夫ですが、ステンレスにも純度がありますので導入する場合は18-8以上の純度の製品を選びましょう。石材店さんで扱っている花筒や線香皿などはホームセンターで購入するものより若干高価なのですが安心して使用できます。
写真は石貼りの下地の鉄筋、もしくはワイヤーメッシュのサビが浮き出たものです。石がサビを吸い込み赤く変色しています。我々石材店側も施工時は金属製品にとても注意しています。
“お酒”に注意
上記で紹介した吸水性により、墓石にお酒を撒くと中に含まれる糖分とタンパク質を吸い込み、石の表面が白く酷い汚れになります。
これもお清めとしてや、お酒が好きだった故人様を偲んでの事で、よくあるのですが容器に入ったままお供えして頂ければ充分かと思います。
万一お酒を撒かれた場合はすぐに水で洗い流し、よく拭き取ってください。
写真のように黒御影の石塔、特に天端が真っ白になってしまいます。
“油”に注意
上記で紹介した吸水性により、油分を吸ってしまいますと酸化により変色してしまいます。
黒御影などの色の濃い石は大気中の成分と化学反応を起こし、虹色に焼け付いてしまいます。
白御影では黄ばみになり、染み込んでしまって水洗いしても落ちることはありません。
ありがちなのは市販のワックス等、光沢剤の使用です。
適正に扱う分には問題はないのですが、一般の方はどの石がどれだけ吸い込み適量なのか、どのくらいの時間で拭き取ったらいいのか分からないと思います。様々な石を取り扱った経験豊かなプロではないとそもそも難しいのが現状です。
車用のワックスを車感覚でやっている方も中にはいらっしゃいますので注意が必要です。
万一油分を含んでしまった場合は完全に元に戻す事は困難ですが、早ければ早いほど修復成功の可能性は高まりますので、その場合はすぐに石材店さんに相談しましょう。
黒御影石に虹色の焼け、白御影石は黄ばみが出てしまっています。
“化学薬品”に注意
上記で紹介した吸水性により、吸い込んだ化学薬品が酸化や紫外線による化学反応の影響で変色、又は劣化する可能性があります。
墓石掃除の際は市販の掃除用洗剤等は極力使用せず、スポンジと雑巾で水洗いするのが一番末長く綺麗に保つことができます。
石材やコンクリートは基本的にアルカリ性ですので家庭用の酸性洗剤(強力洗剤はほとんど酸性です)を使用すると中和が起きて表面を破壊していきます。石だけでなく基礎コンクリートや施工時に使用しているモルタルにも悪影響を与えますので薬品系の使用はプロにお任せしたほうが無難かと思われます。
お墓参りには家族以外の人も
ここまで御影石についての注意点をまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?
意外とやってしまっている、もしくは言われなければやってしまいそうな事ばかりだと思います。
難しく解説しましたが本当は簡単です。
まとめると石というものは吸水性があるので余計なものは使用せず、まめに雑巾とスポンジで水洗いするという事に尽きます。
問題は、お墓参りにいらっしゃるのは施主様ご家族だけではないという事です。
故人様にゆかりのある人やご親族の皆様も当然いらっしゃるでしょう。しかも、いつかは分かりません。
法事など皆様が集まる時に今回の内容を話のタネにして共有していただけたら幸いです。