昨今の新型コロナウィルスにより当店も少なからず打撃を受けましたが、その中で強いて良かった点を挙げれば、これを機に会議やお打ち合わせなどのリモート化が進んだ所でしょうか。多くの企業様はもう既に当たり前のことだったかもしれませんが、当店のような小規模経営の個人店ではやろうと思っていてもなかなか進めることができませんでした。
当サイトも2020年春、最初の自粛期間の時間を使って立ち上げたものになります。その他にもこれまで想像もしていなかったオンラインリモートでお打ち合わせなど順次対応できるようになりました。
私のように普段現場仕事をしている者にとっては茨の道でしたがおよそ1年かけてここまでできるようになったのは"唯一"のコロナの恩恵かもしれません。
さて、今回はそんな当店サイトにて県内よりご相談を頂き、墓所をリフォームしたケースを紹介したいと思います。
目次
サイトでのご相談
2020年以前は当店ではホームページを持っていなかったため、これらのご相談に関しては余程縁故がある方でない限りありませんでしたが、現在では県外にお住まいの方から群馬県内墓地の納骨ご依頼から墓地工事に至るまで全ての事が対応可能になった事は飛躍的進化と言えるかもしれません。
現在では『お問い合わせフォーム』や『納骨』ページからのご依頼は瞬時に私のPCやスマートフォン、更にはスマートウォッチに通知され、ご返答できるようになっております。
今回は静岡県在住のお施主様より、なかなかいらっしゃることが出来ない前橋市内墓所の事についてのご相談でした。
なかなか行けないお墓の管理が心配
今回のお施主様のようにごお墓が群馬県にあるけどお住まいが遠隔地なのでその管理にご不安を抱えている方は老いのではないでしょうか?
なぜなら多くの場合、霊園自体は管理費を納めているので雑草等管理の心配はないのですが、墓所内は個人で管理しますのでご自身で常に綺麗にしておく事が必要です。霊園の規約にもその事は多く書かれていますし、実際に草や木が生えたままの状態ですとお隣のお墓にも迷惑がかかってしまいます。
そんなわけでお施主様のご要望は主に以下の2点でした。
お施主様のご要望
- 昔からのお墓なので自分のお墓の境界がわからないので管理上これを機に明確にしておきたい。
- まめに掃除に行けなくても草むしりや掃除等、手間のかからないお墓にしたい。
ただ、打ち合わせの為に何度も電車でお越し頂くのも大変ですので、全てお電話とオンライン打ち合わせで行いました。結果的にはお施主様が実際にお越しくださった回数は完成後、開眼を行った1回です。
では、どのような過程で進捗していくのか見てみましょう。
完成までの過程
以下が主な工程になります
- 墓地委員会と境界確定(当店が代理)
- プラン打ち合わせ(オンライン)
- 閉眼(当店が代理)
- 解体工事
- 遺骨お預かり(当店保管)
- 基礎工事
- 既存墓石の清掃
- 石工事
- 完成
- 開眼(お施主様立ち会い)
では、細かく内容をみていきましょう
墓地委員会と境界確定(当店が代理)
写真のように今回お施主様が一番懸念されていた事が墓所の境界がなく、また草むしりにも頻繁に来ることができないため、まずはその問題を解決することにしました。
当店がお施主様の代わりに行った事は以下の点です。
- 墓地管理代表者にご相談
- 墓地委員会の役員様と現地打ち合わせ日程の調整
- 測量
- 墓地委員会立ち会いの上、境界確定
- 杭打ち
お墓の四隅に木杭を打ちました。基礎工事までの目印になります。
プラン打ち合わせ(オンライン)
プランの打ち合わせは現在Zoomやメールなどを使い、さほど不自由なく行うことができます。
今回のポイントとしては前述の通り、
- 墓所内に草木が生えない
- 枯葉などのゴミや砂埃が溜まらない
- 水はけが良く苔や水垢が発生しにくい
というテーマでしたので解決策として
- 境界内に土の部分を作らない
- 外柵で囲わない
- 凹凸を作らない
という事を心掛けたプランにしました。
正面左の壁は腰掛け代わりにもなり、又この場所は赤城山からの北風が強い所ですので風避け(ゴミ避け)にもなります。
石塔は思い入れのある既存のものを清掃後に再利用することになり、それに合わせた色の土台石を使用することになりました。
施工前のお墓は遺骨を納める入り口が香炉の後ろ側に小さな蓋があり、中の様子もわからない仕様になっていますので今回のプランなら広くゆったり、明るい納骨室になると思います。
閉眼(当店が代理)
工事着工前にお施主様より寺社様の了解を得て、当店が代理で閉眼供養を行いました。お花等必要品もご用意致します。
解体工事
いよいよ着工。解体工事が始まります。
途中で納骨室内部の様子が見えてきました。
遺骨と内部の土を一旦当店でお預かりします。
一旦全ての石、埋蔵物を撤去します。
ほぼ解体終了です。
遺骨お預かり(当店保管)
今回は解体工事から新規墓所の工事まで長期間の保管でないため、当店で遺骨の方はお預かりしました。
遺骨は臭いもある程度ありますし、重量もありますので施主様がご自身で持ち帰るのは大変です。
基礎工事
今年のお盆前は非常に暑く、手掘りでの根堀は大変でした。
お墓は重機が入る場所が少ないので基本的には人間の手で行う作業が多いです。
高校生の長男が夏休みで助っ人に来てくれたのでだいぶ楽になりました!
根堀りが終わりました。お墓の基礎コンクリート厚みは前橋市ですと基本的には30センチです。
冬場の凍結深度(土が凍る深さ)にもよりますが、寒冷地ではない限り、全国的にはこれが標準かと思います。
※一般的に標高×mmが基礎深さになります(例えば標高500m=基礎深さ50cm)雪の多い地方は土が凍らないのでその限りではありません。
基礎コンクリートが薄いと強度が不足しますし、厚すぎても重量がありすぎてその下の地盤の影響を受けやすくなります。
境界杭のとおりに型枠を組み、砕石を転圧し、鉄筋を組んでいきます。
真ん中の四角に組んだ板石は納骨室内部の下段になります。完成すると内部が全て御影石になって綺麗ですので当店独自の仕様になります。
コンクリートを流し込みました。
これから天端を均していきます。
乾くまで何度もコテで擦るほど、綺麗なコンクリートになっていきます。
コンクリートの仕事は入れるのは短時間ですが、その後半日かかります。
綺麗な基礎になりましたね。
既存墓石の清掃
基礎コンクリートが乾燥するまでの期間は石の加工や彫刻、今回石塔は既存を再利用しますので分厚く覆われてしまった苔を取っていきます。
御影石ではないのでスクレーパーなどが使えず、薬品洗浄しました。
洗浄前は緑色の苔で覆われています。
洗浄後、苔は全て取れました。
石工事
いよいよ石工事に入っていきます。
まずは下廻りから組み立ていきます。
この内部全体がが納骨室内部になります。
棚板と立ち上がりの石を据えていきます。
全ての石のジョイントはマスキングテープをし、コーキング(ジョイントコーク)をしていきます。
立ち上がりジョイント上部はステンレス金物を埋め込みます。
もうすぐ土台が仕上がりますね。
土台天板はジョイント無しの一枚石です。これで耐候・防水性は飛躍的に上がります。
納骨室内部の様子です。
土台内部の空間がそのまま納骨室ですので広々です。
砂の部分は将来的に棚の上に乗らなくなった骨瓶の遺骨を穴を掘って埋蔵できるようになっています。
元々納められていた遺骨は工事中当店にてお預かりしておりましたのできれいになったカロートにこれから納めさせていただきます。
完成
完成しました。
スッキリとしたデザインで面積の割に広く感じます。
背面もシンプルで綺麗です。
土台両横に通気口があり、納骨室内部の湿気を逃がします。
開眼供養(お施主様立ち会い)
今までの常識からすると少し奇妙に思えるのですが、ご相談をいただいた時から完成までの間、一度もお施主様に直接お会いしていませんが全ての進捗状況や問題移転をご報告させていただく事で信頼関係を築く事ができました。
なんとお会いしたのは完成して開眼供養の時です。
しかしここまでお施主様のご協力もあり、何も大きな問題もなく全てがスムーズに運びました。
開眼供養に際し宿泊先の手配をさせていただき、前日駅にお迎えに参りました。
夜は宿泊先ホテルでディナーをご一緒させていただき楽しい時間を過ごすことができました。
無事開眼が終わり、全工程が終了となります。