月日が経つのは早いもので、あの想像を絶する犠牲者と被害をもたらした東日本大震災より今年で10年になろうとしています。
日々の暮らしの中、また昨年からのコロナウィルス流行により少しづつあの時の衝撃、気持ち、防災に対する意識など薄らいではいないかと再確認する節目でもあると思います。
私自身は群馬県前橋市で震度5強を経験しましたが、実際に震度6強を経験した東北の皆様の経験を思うと想像に余りあります。
この記事中の写真により不快な思いをされる方もいらっしゃると思いますので公開を悩みましたが、石材店という立場からでも当時の前橋市の被害を通じて地震の怖さを通じ、この教訓から日々の生活の中に『防災』の意識を再確認する事を目的としています。
お墓建立当時と現在の施工を比較批判する事は今回は意義がありませんので、そういった指摘や集客目的の意図ではないことをご理解頂ければ幸いです。
この記事の趣旨
墓所における地震被害を通じて地震の怖さをもう一度思い出し、備えるよう心がけましょう。
目次
震度5強での墓地被害
石塔の倒壊・ずれ
石塔、特に棹石はお墓の最上段にあるため最も地震に弱い所となります。
高いところからの落下であるためその破壊力、エネルギーは凄まじいものになります。
棹石自体も重量があるため、落下時に触れたものは全てなぎ倒し、破壊してしまいます。
外柵の倒壊・ずれ
写真を見て想像してください。もし、この通路に自分がいたら。。。。。
外柵材はお墓の部品の中でも大きく、重量も重いものになります。単純に落ちてしまっただけでも危険ですが、これが揺れにより振り子のように加速して落ちてきたらと思うと恐ろしいです。
ちなみに今回の写真には紹介できないのですが(紛失してしまいました)重量が非常に重い“石”という特性上、アンカーボルトを打ち込んだステンレス製の耐震金物も飴の様にグニャリとねじ曲がってしまっています。ただ、倒壊は避ける事ができたようです。
灯籠、過去碑などの倒壊・ずれ
墓地の中では比較的小さく感じる灯籠などの付属品も、地震のエネルギーにより大きな破壊力になります。
その他被害写真
思い起こせば10年前の震災当時は今のようにスマホは普及しておらず、手軽に高画質な写真を残すことができませんでした。以下はガラケーでの写真撮影のため画質が荒く、少し見づらいのですがその他被害写真になります。
揺れによる本当の怖さを理解しておこう。『共振』とは?
倒れるだけではなく、吹き飛ぶ怖さ
以下の写真4枚は同じ現場なのですが、修理のご依頼を頂いた際、被害状況を撮影したものです。
基本的には外柵まわりが下に滑り落ちてほぼ壊滅、石塔も動き、灯籠も倒壊といった状況でした。
黒御影の外柵材、人為的にやろうとしてもこれほど大型重機で余程の衝撃がないとこれほどまでに壊れません。倒れたというより石材自体が吹き飛んでいるのに地震エネルギーの恐ろしさを感じます。
なぜこれほど地震で石が吹き飛んでしまうのか
単純に地震で倒れたのではなく、共振(石と石同士が共鳴して揺れのエネルギーが一気に増幅される現象)が起きたと考えられます。
共振とは?
例えば洗濯機を思い起こしてみてください。洗濯を開始し、しばらくはモーターによる小さな揺れがあると思います。しかし、ある一定の揺れのところでモーターの振動とドラムが回転する振動の周期(揺れ)がピッタリ一致した時、エネルギーが増幅され洗濯機自体が揺れ出す時があります。これが共振です。
この現象が地震時に墓所内、家庭内、至る所で起きているのです。
つまり、地震による災害時はありとあらゆる物体が凶器となって飛んでくるのです。
手抜き工事が発覚する一幕も
余談にななりますが上の写真の土台部分を見ていただくと、板石が剥がれかかっているのが分かると思います。施主様は今まで無垢の石だと思っていましたが、実際は土台部分がブロックに板張りをしているものでした。
県内某大手メーカーさん製で建立当時、最後に大幅値引きの提示があったため決めたそうです。私はメーカーさん自体が悪徳業者とは思いませんが、そこに携わった営業マンの裁量(成績などの都合)で起きたことだと思います。とは言ってもお施主様にとっても業者さんにとっても、お互いを信用しない限りは前に進みません。
実は私は建築の営業畑出身ですので経験上、会社で選ぶよりもそこに携わる人を選んでお買い物をされることを強くお勧めします。
教訓を生かして今できる事は?
震災中心地にいなかった私がこのような記事を書くのも大変おこがましいのですが、私たちが当時の写真を敢えて見聞きし、できる事といえばこれを教訓にして災害に対する意識を持ち、普段から防災対策を実行し、そして恐ろしさを後世にも伝えていくことに他なりません。
どんな災害でも被災してしまった方々は、いつか来るかなと思ってはいたが、『まさかあの日、あの時だとは思わなかった』と思うはずです。実際に私の被災してしまった友人も言っていました。
ポイントはまさにそこだと思います。
今回本当にお伝えしたい事は、お墓に限ったことではありません。
例えば日頃より
- 自治体の災害マップ等確認し、避難先を決めておく
- 定期的に避難ルートの確認と訓練をする
- 高齢者や小さなお子様がいる家庭は特に避難の段取り、連絡先を決めておく
- 防災グッズを集めておく
- 防災用食料の備蓄
- 家の中の物の配置、揺れたら危険か見直してみる
- 住宅や門柱、お墓等構造物の耐震化をしておく
- アラート(警報)を軽視しない
など、今やっておける事はたくさんあるはずです。
奇しくも人の死に立ち合わせて頂く機会がある石材店という立場だからこそ、震災で命を失ってしまった方々、被災されてしまった方々の思いを無駄にしないよう、今私たちができることをお伝えさせていただきました。
引き続き、微力ながらできる範囲の支援を続けさせていただきたいと思います。